コンビニのレジで、財布を出したら小銭がちょうどあった。
ぴったり払えた時の気持ち良さは、何度経験しても良いものだ。
後ろに並んでいた人も、時短という意味で、少し得した気分になっていると良いのだが。
そう、買い物は現金派です。
小銭が、ちょうどあった。
ぴったりだった。
一円の誤差もなかった。
数秒の話だ。
だが、無駄がなかった。
それだけのことが、なぜか悪くなかった。
俺には、わからない。
ただ、少しだけ、得をした気がした。
戦場では、余裕など存在しない。
一瞬の隙が、命取りになる。
時間とは、消費するものではなく、奪われるものだ。
奪われるな。
削られるな。
無駄にするな。
一秒が、一分になる。
一分が、一時間になる。
積み重なった無駄が、やがて男を蝕む。
時間を制する者が、戦場を制する。
数秒の話だ。
たった、数秒。
だがその数秒が、男の一日を変えた。
無駄がなかった。
迷いがなかった。
過不足がなかった。
ぴたりと、噛み合った。
男は、静かにその場を後にした。
誰も気づかなかった。
誰も見ていなかった。
だが、確かに、何かが決まった瞬間があった。
その感覚を、男はしばらく忘れられなかった。
次回「精密射撃」。
戦場は、いたるところにある。

