蜘蛛が出たので何とかして欲しいと言われ、勝手に手のひらサイズを想像して駆けつけたが、そこにいたのは1cmにも満たないハエトリグモだった。
何かいじらしいその姿に、他の虫を食べてくれたりするので問題ないことを告げて、そのまま部屋を出た。
斥候という役割がある。
小さく、目立たず、しかし確実に、任務を遂行する者たちだ。
呼ばれて駆けつけた。
だが、そこにいたのは、想像とは、かけ離れた存在だった。
脅威ではなかった。
むしろ、同じ戦場を生きる、同志だった。
俺は、何も言わなかった。
ただ、その場を後にした。
最前線に、小さな兵士がいた。
装甲もない。
武装もない。
だが、奴は、そこにいた。
誰にも気づかれず、誰にも頼らず、ただ黙々と任務を遂行する。
援軍を求めず、撤退を求めず、補給すら求めない。
これが斥候というものか。
それとも、これが、本物の兵士というものか。
脅威と思い、駆けつけた。
だが男が見たのは、孤独に戦場を生きる、小さな意志だった。
引き金を引く理由が、見当たらなかった。
男は黙って踵を返した。
戦場に、大きな敵だけがいるわけではない。
小さな兵士が、今日も最前線に立っている。
誰も知らない場所で。
誰も見ていない場所で。
奴は、戦い続けていた。
次回「斥候」。
最も小さな兵士が、最前線を守っていた。


